中東の地政学が急速に書き換えられている。核問題を格好の宣伝材料と捉えたイランは、自国こそ中東情勢の中枢であるとの印象を世界に誇示し始めた。一方、もう一つの中東の大国サウジアラビアは、2016年4月サルマン国王がオバマ大統領とリヤド会談を行ったが、国王の振る舞いは80年におよぶアメリカとの戦略的同盟関係の終焉を意味するものだという。また、イラン同様、古代より長い歴史を育んできたトルコは、「問題ゼロ外交」を掲げ、中東の民主主義モデル国家と見なされていたが、その外交政策が破綻しトルコの対外関係を窮地に追い込んでいる。11月に起こったトルコ軍によるロシア機撃墜は、両国の友好関係に緊張をもたらした。それぞれ国内を見ると、イランのダブル選挙、サウジアラビアのビジョン2030など内政改革への動きが見られる一方、トルコ軍によるクーデターは失敗にこそ終わったが国民の分裂をもたらした。いずれにしても、揺れる中東情勢の中でこの三カ国の動きが今後の鍵を握ることは間違いない。
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ローザンヌ合意は中東の典型的なゼロサムゲームの図式
中東の覇権を握ろうと目論むイランの野望 -
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サウジアラビアがイエメンを空爆した背景 -
負け組の象徴「妥協」によって外交のリアリズムを発揮
イランは中東の新しい地政学をリードできるのか? -
トルコ与党弱体化の背景にはイランとの関係がある?
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ネオ・オスマン主義外交へのシフトがいまや破綻の瀬戸際
トルコ民主主義の行方(2)問題ゼロ外交の破綻 -
クルド票・反クルド票の双方を集める危険な賭け
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「第2次冷戦を深めた要因」に発展する可能性のある重大事
トルコ軍ロシア機撃墜問題(1)募る緊張、関係悪化の背景 -
露土間のシリア問題をめぐる態度が大きく影響
トルコ軍ロシア機撃墜問題(2)北シリアをめぐる民族問題 -
クルド自治国家容認は必至、国際対立の敗者はトルコ
トルコ軍ロシア機撃墜問題(3)戦略的利益はあったのか -
ロシアを中東の主要プレイヤーに仕立てたプーチンの手腕
トルコ軍ロシア機撃墜問題(4)ロシア強硬姿勢の理由 -
脳裏に浮かんできたのは「イスラームの悲劇」という言葉
中東最新事情を読む(1)サウジ・イラン断交 -
核合意の先を目指すイランの外交力と優れた資質
中東最新事情を読む(2)イランの国際社会復帰 -
やっきになるか、冷静に見守るか。最後に笑うのはどっち?
中東最新事情を読む(3)イランとサウジ、どちらが上手? -
もはや幻想となった「遊んで暮らせるサウジアラビア」
中東最新事情を読む(4)レンティア国家サウジの変容 -
対サウジに見るイラン国内における分裂症的言動
中東最新事情を読む(5)イラン国内の二つの流れ -
イランのしたたかな外交力こそ中東危機の最重要ファクター
中東最新事情を読む(6)伝統と革命が併存するイラン -
シーア派VSスンナ派~セクタリアン・クレンジングの恐怖
中東最新事情を読む(7)危機の元凶・宗派対立 -
「保守強硬派VS穏健改革派」よりも重要な問題がある
イランのダブル選挙(1)二項対立の奥で戦われたもの -
「革命を知らない」若い世代にヒットしたローハニ路線
イランのダブル選挙(2)対外融和路線に呼応する民主化 -
「投票率60パーセント」の裏にある真実とは?
イランのダブル選挙(3)管理された民主主義 -
「美しい友情の始まり」はイラン民主主義に結実するのか?
イランのダブル選挙(4)国民が発信したシグナル -
過去3回のクーデターとは一線を画すトルコの軍事テロ
トルコの一番長い夜とクーデター(1)武装蜂起失敗の背景 -
「最悪の文民政府でも最高の軍事政権よりはるかにましだ」
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アプリでメッセージ!最新メディアがエルドアンを救う
トルコの一番長い夜とクーデター(3)メディアの恩恵 -
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